「血液透析療法」は、透析膜を通して血液をきれいにし、余分な水を取り除く治療法です。透析膜は半透膜という特殊なはたらきをもつ膜です。半透膜には目に見えないレベルの大小の穴が開いていて、穴より大きな物質は通れず、穴より小さい物質は通れます。この半透膜の穴を通して、細胞膜の内側の方に多くある物質は細胞膜の外側へ、細胞膜の外に多い物質は細胞膜の内側(物質が濃い方から薄い方)へと移動していきます。
この濃度差による物質の移動を「拡散」といいます。塩水の入った器に野菜を一晩漬けておくと、塩味の効いた一夜漬けになります。これは半透膜である野菜の細胞膜を通して、器の中の塩が塩分濃度の薄い細胞のなかに拡散していくからです。
人工腎臓(透析器:ダイアライザー)には図1に示すように、筒のケースに、半透膜のはたらきを持つ糸状の透析膜約1万本が束になって入っています。この糸はストロー状になっており、血液透析療法が開始されると約4時間、この糸1本1本の中を血液が1分間に250mL程度の速度で流れ、糸と糸の隙間には透析液が1分間に400mL程度の速度で流れ続けます。透析液は、血液の中から取り除きたい物質の量を血液より少なく(濃度を薄く)、血液に補充したい物質を多く(濃度を濃く)してあります。
このため、図2に示すように、血液の中に溜まった老廃物やカリウム、リンなどは血液から透析膜の穴を通して透析液の方に拡散して出ていき、血液はきれいになっていきます。逆に透析液のカルシウムなどの濃度は血液よりも濃く作られているので、透析液側から血液側に拡散し血液に補充されます。
一方、からだに溜まった水分を除去するには、透析装置内の除水ポンプで透析液側から引っ張る力(陰圧)を作り、血液中の水分を透析膜を通して透析液側に移動させます。このように、透析膜を通して血液中の水分を強制的に透析液側に移動させることを「限外ろ過」といいます。
つまり、血液透析療法は透析膜、透析液を用いて、「拡散」で血液をきれいにし、「限外ろ過」で溜まった水分を取り除いているのです。
続きはこちら:血液をきれいにするって?(2) ー体外式限外ろ過療法ー