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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2017.3.23

CKD ~慢性腎不全~ 透析療法(2)

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

前回、慢性腎臓病(CKD)の考え方と重症度分類について述べました。今回はCKD G5(末期腎不全)に関して述べます。
末期腎不全とは、腎機能が糸球体ろ過量(GFR、eGFR※)で15未満に低下した状態を言います。そして、GFRが50以下(40~69歳)、40以下(70歳以上)では、CKDの原因に関係なく、末期腎不全に進行する危険が増加します。このため、eGFR50以下では、一般の開業医から腎臓専門医への紹介が進められています。
末期腎不全とは臨床的にどのような状態なのかというと、自身の腎臓では自分の体の状態を一定の正常状態に保つ事(恒常性)が出来なくなった状態と考えられます。ヒトの体では恒常性を維持するために様々な機能が働いていますが、その中心が腎臓です。腎臓の働きには表1に示すように、多くの重要な働きがあります。腎不全とは、これらの様々な機能が障害された状態であり、CKD重症度分類でG3からG5に進むにつれて、これらの機能が障害されていき、G5になると、その多くが障害されて、いろいろな症状や体の変調が現われてきます。

例えば、
1.体内水分量の調節が障害されると、浮腫、高血圧、うっ血性心不全
2.電解質の調整、排泄が障害されると高カリウム血症
3.余分な酸や老廃物の排泄が障害されるとアシドーシス(体液がPH7.4より酸性に傾くこと)や尿毒症
4.エリスロポイエチンの産生が低下して腎性貧血
5.ビタミンD活性の低下、Ca・リン代謝の異常で骨粗鬆症、血管や臓器の石灰化

等々多くの異常が出現します。これらの中で、水分バランス、電解質バランス、血液・体液のPH、老廃物の排泄などは透析療法である程度代用できますが、内分泌機能などは透析療法ではまかなうことが出来ません。このように、末期腎不全の治療として透析療法は絶対必要なものでありますが、それだけでは本来の腎臓の働きを全てカバーすることはできません。そのためには、水分管理と食事療法などの自己管理とエリスロポイエチンやビタミンDなどの補充療法が必要となります。
慢性腎不全は糖尿病、糸球体腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞腎、膠原病など様々な疾患が原因で発症し悪化します。現在、末期腎不全から透析導入に至る疾患は1位.糖尿病、2位.糸球体腎炎、3位.腎硬化症となっており、糖尿病、腎硬化症が増加しています。このように、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどとCKD、腎不全の進行は強く関連しており、自己管理が非常に大切であると指摘しておきます。

※eGFR(推算糸球体ろ過量):血清クレアチニン値と年齢から推定する式を利用して計算した値をいいます。