MENU 使い方
ガイド

私たちは、患者さま、お客さまへ
トータルサービスを提供する
医療・福祉グループです。

文字サイズ
標準
背景色

採用情報

CLOSE

お役立ちコラム

医療トピックス

2021.2.22

腹膜透析(CAPD)について (1)~ 腹膜透析とは?~

横浜第一病院
内科診療部長 田山 宏典

お腹(腹腔)には、大腸や小腸が入っていますが、この腸管は腹膜と言われる膜で包まれています。腹膜透析(PD)とは、この腹膜を利用する透析方法です。腹腔の中に、管(腹膜透析カテーテル)留置し、その管を利用して、一日3回から4回、1回に1.5Lから2.0Lのブドウ糖主体とした液体(腹膜透析液)を8時間前後貯留し、この腹膜透析液を出し入れして交換します。腹膜透析カテーテルは、手術にて腹膜に固定し、腹腔から皮膚の下を通して体外に出します。この経路を皮下トンネルといい、カテーテルが体外にでる部分を出口部と言います。このカテーテルは、しっかり腹膜と皮下に癒着し固定するので、一度入れたら腹膜透析を止めるまで、入れたままになります。血液透析は、内シャントと言われる特殊な血管に針を刺し、血液を体外に取り出し、濾過器(ダイアライザー)を通した後、針を介して体内に戻すため出血等の危険があり、ほとんどが病院やクリニックで行われていますが、腹膜透析は針を血管には刺さないため、自宅または職場にて、自分自身で行えます(図1)。

日本での腹膜透析のはじまりは1980年初めで、1983年頃から普及し始め、血液透析患者と同様に腹膜透析患者は増加傾向にありました。しかし被嚢性腹膜硬化症と言われる合併症の影響で、1997年頃から腹膜透析患者は減少し、その後も伸び悩み、現在に至っております。その後、腹膜透析液が改良され、被嚢性腹膜硬化症は、ほぼ消失しております。
腹膜透析患者数の近況は、日本透析医学会の統計調査によると、2017年末の腹膜透析患者数は9,090人で、血液透析の患者数が334,505人ですから、透析患者全体の2.7%程度となります。透析とは、命を維持するには、不十分となった腎臓の働きを代行するための治療法ですが、腎移植も含め、一般的に腎代替療法と言います。腹膜透析は、体の中にある腹膜と言う生体膜を利用して行うものなので、腹膜の劣化が進むと、膜を交換することはできず、尿量が減ってきた場合、継続が困難になり、3~8年程度で、血液透析や腎移植に変更しなければならなくなります。このような、流れを包括的な腎代替療法(図2)と言い、腹膜透析は血液透析や腎移植への橋渡し療法とも言われています。また、腎代替療法の開始時、腹膜透析から開始することを「PDファースト」と言いますが、血液透析と比較して、尿量が維持できる期間が長く、血液透析での繰り返し血管に針を刺す負担を遅らせることができ、3~8年程度の短期的療法であっても意味があると言われています。何より病院ではなく、自宅でできることが大きな違いです。