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医療トピックス

2025.12.2NEW

「エコー下穿刺」導入の取り組みについて

横浜第一病院 
診療部 末木 志奈

善仁会グループでは、透析患者さまにより安全で快適な透析治療を提供できますよう、「エコー下穿刺(エコーガイド下穿刺)」導入の取り組みを進めております。今回はバスキュラーアクセスセンターの医師より、その取り組みについて、ご紹介いたします。

 

エコー下穿刺とは
「エコーガイド下穿刺」「エコー下穿刺」という言葉をご存じでしょうか? 超音波診断装置を使用して、血管に針を刺す技術のことをいいます(図1)。血液透析療法は、医療材料や血液浄化装置の進化とともに、血管に針を刺す技術も進化を続けています。通常の穿刺は「ブラインド穿刺」といって、手元の感覚や視覚を元に針を刺していきます。多くの患者さまはこのブラインド穿刺で針を刺すことが可能です。しかし、血管が細い、血管が深く走行している、曲がっているような方で穿刺困難となっている場合や、シャント作製直後で血管が未発達、また穿刺の失敗に伴う腫れを避けたい場合には有効です。
しかし、エコー下穿刺は誰でもどこでもすぐできるわけではありません。超音波装置が透析室にあること、また超音波装置に慣れる必要があります。超音波装置は近年急速に進化し、針を刺すことに特化した小型な装置(図2)が発売されました。超音波装置の小型化に成功したことにより、穿刺での持ち運びが便利となり、エコー下穿刺のために患者さまをお待たせしてしまう時間の短縮が可能となりました。
ブラインド穿刺では触れる血管しか穿刺ができませんが、エコー下穿刺では触れづらい血管にも穿刺することが可能となり、穿刺範囲を広げることができるようになります。そのためシャント血管の瘤化を防ぎ、同一部位穿刺に伴う出血・感染のリスクを低下させシャントを長く使用することができます。

◎POCUSを行うことで、ブラインド穿刺の際にも役に立つ
超音波装置は、エコー下穿刺のためだけに使用するわけではありません。よく触れるのになぜか針がひっかかると言われた経験はありませんか? そのようなときは“POCUS(Point-of- care ultrasound)”が有効です。“POCUS”とは的を絞った短時間の超音波検査のことです。POCUSであれば、穿刺に特化した小型の超音波装置でも可能です。シャント血管の中には静脈弁という逆流防止弁がありますが、外から触れてもわかりません。穿刺する部分のみ超音波装置で血管内腔を確認し、穿刺を邪魔するものがあるかどうかをみて、ブラインド穿刺を行うだけで、穿刺ミスを減らすことができます。また、外から触れているだけだと、シャント血管(静脈)と動脈がわかりづらいことがあります。動脈へ間違って穿刺してしまうと、針を抜いた直後に急激に腫れ、最悪の場合には出血を止めるために緊急手術が必要となります。POCUSで動脈と静脈を確認することで、動脈への誤穿刺をなくすことができます。

◎エコー下穿刺はストレスの軽減につながる
穿刺は透析患者さまにとって、ストレスの上位項目に常に上がっています。それとともに穿刺するスタッフのストレスの上位にも常に上がっています。穿刺の失敗を減らすことは、お互いのストレス軽減になります。まだ超音波装置の台数も、エコー下穿刺ができるスタッフも限られていますが、当グループでは積極的に小型の超音波装置を導入し、それとともにエコー下穿刺ができるスタッフ教育を進めています。エコー下穿刺は通常の穿刺と刺す感覚が異なり、超音波装置の使い方も学ぶ必要があるため、当グループ内の専任の指導者が教育してから実臨床で行っています。エコー下穿刺を習熟したスタッフの穿刺成功率は99%といわれています。今後も患者さまの穿刺ストレスの軽減に向けて、より一層努力してまいります。