2023.1.20
日本の透析患者さまの6割以上に皮膚掻痒症が合併し、患者さまのQOL(生活の質)を著しく低下させています。透析患者さまは、発汗や皮脂の分泌が低下しています。そのため、皮膚表面の角質層内の水分が低下し、かゆみを感じやすくなります。さらに、かき壊しによって、かゆみが悪化します。
保湿を図るためにヘパリン類似物質(ヒルドイド)、白色ワセリン、尿素製剤(ケラチナミン・ウレパール)等の外用薬を塗布し、低湿度環境の改善を行い、頻回の入浴・シャワーなどを避け、皮膚の乾燥を予防することが大切です。
また、本来は尿中に排出されるリン・尿毒素などのかゆみ物質の蓄積が、かゆみの原因となります。リンを多く含む乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルトなど)、加工食品(インスタント食品、冷凍食品、清涼飲料水など)などの摂取を控え、十分な透析にて血液中のリン・尿毒素を取り除きます。さらにリン吸着剤を食事に合わせてきっちり内服し、便中にリンを排出し、血液中のリン濃度を下げることが大切です。血管石灰化を予防する目的でもリンのコントロールは重要です。
透析患者さまに特有ではありませんが、アレルギー性皮膚炎によるかゆみに対しては、抗ヒスタミン剤(レスタミン)の塗布もしくは内服、ステロイド含有の外用薬の塗布を行います。このような対策と治療を行っても、かゆみを抑えられない場合は、脳内へのかゆみの伝達を断ち切ることによって、かゆみを抑制するナルフラフィン塩酸塩(レミッチ)の内服を行います。
かゆみの原因は、透析患者さまによって複数にわたり、適切な治療法は患者さまごとに異なります。医師・看護師・薬剤師などの医療スタッフに相談しましょう。