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医療トピックス

2021.8.11

シャントの管理とケア

横浜第一病院
バスキュラーアクセスセンター
センター長 笹川 成

シャントには自分の腕の動脈と静脈をつなぎ合わせる内シャントと人工血管で橋渡しをする人工血管内シャントがあります。9割近くの方は内シャントで透析治療を受けておられますが、透析年月が長くなればなるほどシャントの比率は減り、人工血管、上腕動脈表在化の方が増えて行きます(表1)。残念ながら人工血管やカテーテルは体にとっては異物ですのでしっかりと管理しなければ長持ちはしません。シャントはうまく使えば10年以上持ちますが出血、感染、狭窄、閉塞などの合併症を起こすことがあります。

◉出血針を刺すと皮膚や血管に穴が開きますが、その穴を血小板や凝固因子という血液を固める血液成分が塞いでくれます。しっかりと止血をすること、また、かさぶたがある周辺は次の透析で使用しないことが重要です。
シャントの止血時間の目安は約5~10分で、時々音を聴くのが理想です。上腕動脈の止血時間は約15分で最初の5分はやや強めに押さえ、その後の10分は少し弱めに押さえます。ともに圧迫綿球は1時間しておき、下の絆創膏は可能であれば、かさぶたがしっかりできる24時間は剥がさないようにしましょう。ただし絆創膏が濡れた場合は、雑菌が繁殖するため新しいものに貼り替えてください。

図1
 ◉感染:針を刺したところが赤くなり、痛みや膿を持つ状態です(図1)。私たちの皮膚には常在菌という普段は体には影響のない菌が存在しています。そして布団や机の上、洋服には菌がいます。皮膚はバリアの一つですが透析の時に針を刺すとバリアに穴が開きます。汚れた指で針穴を触ることで菌が体内に入ります。同じ場所に針刺しをする(同一部位穿刺といいます)ことでも起こります。まれに、シャント感染から敗血症(菌が全身に回り命を落とす)を起こすこともあります。普段から手や爪、衣服の清潔を心がけましょう。透析前に自宅や透析室の洗面所で腕を洗うことはとても有効で、石鹸で洗うとさらに効果的です。

ペンレスなどの局所麻酔テープや局所麻酔軟膏を塗る方は、腕を洗った後に使用するようにしてください。またかゆみ止め等の軟膏を塗っている方は穿刺前に申し出てください。軟膏には指の菌や洋服の菌がついていることがあります。

◉狭窄、閉塞:シャントは動脈と静脈を繋ぐので、血圧差により静脈の内側の壁が傷みます。痛んだところは体が治し続けるため、結果狭くなります。そのまま放置していると血液が流れなくなり、血栓(血液の塊)ができます。狭窄であれば皮膚を切らずに針穴だけで血管内治療(PTA)ができますが閉塞した場合は皮膚を切る手術が必要になることもあります。

では管理はどうしたらよいのでしょうか。 
それはご自身でシャントを知る、見る、聴く、触ることです。

◉知る:「合併症、その原因、そしてそれらを回避するにはどうしたらいいか」を知る。

◉見る:「腕が腫れていないか、血管にコブは無いか、へこみは無いか、赤みは無いか、膿が無いか」を見ましょう。特に腕の腫れは狭窄の症状の一つかもしれません。

◉聴く:動脈と静脈をつなぐシャントは 特徴的なザーザーとかゴーゴーと連続的に聴こえます。狭窄が起こると流れが滞りザッザッとかゴッゴッと断続的になります。普段と違う音が聴こえた場合はスタッフに申し出てください。シャント音を確認する際は、聴診器を使うと良いでしょう。

◉触る:指や手のひらでシャントを触り、シャントの連続性の血流がザワザワした感じであるか確認しましょう。シャントに狭窄があるとドキンドキンとした拍動のみになります。閉塞した場合、血管が冷たくなり、つなぎ目だけがドキドキすることがあります。感染がある場合、触ると痛みがあります。

合併症は発見が早ければ早いほど小さな手術ですみます。自己の管理がとても大切になります。わからないことがありましたらスタッフや主治医におたずねください。また、判断が難しいときには、バスキュラーアクセスセンターの紹介をご依頼ください。