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よくわかる透析の基礎知識

2025.10.17

血液ろ過透析療法

吉祥寺あさひ病院
院長 有村 義宏

血液ろ過透析療法(HDF)は、血液透析療法(HD)と血液ろ過療法(HF)の双方のよいところをあわせもつ治療法です。図に示すように血液透析のよいところは、人工腎臓(ダイアライザー)を用いて「拡散」と「ろ過」により尿素、クレアチニンなど体にたまった小さな物質(小分子量物質)を効率よく取り除けることです。「拡散」とは、透析膜を通して物質が濃い方から薄い方に移動することで、「ろ過」とは透析膜を通して尿毒素を含む水分を血液から透析膜の外に引き込むことです。

一方、血液ろ過療法のよいところは、大量のろ過によりアミロイドのもととなるβ2ミクログロブリンなどの物質(中分子量物質)を除去する能力に優れていることです。アミロイドがたまると手のしびれや骨折などのリスクが高まります。一方、血液ろ過透析療法では大量の補充液が必要で、操作に手間がかかります。

血液ろ過透析療法は、透析と同時に大量のろ過もできる人工腎臓(ヘモダイアフィルター)を用います。透析による拡散に加え、透析液の一部を補充液として血液回路内に注入することで、大量のろ過も行います(オンライン血液ろ過透析)。なお、血液ろ過透析では、透析液を血液の中に直接注入するため、透析液の細菌やエンドトキシンなどの不純物をしっかり取り除き、特に清潔に保つ必要があります。

血液ろ過透析療法には、透析液を人工腎臓の前の回路に注入する方法(前希釈法)と人工腎臓の後の回路に注入する方法(後希釈)とがあります。日本では前希釈法が多く用いられていますが、海外では後希釈が用いられています。
日本透析医学会の調査(2022年)では、慢性維持透析患者の中で血液透析療法が41.5%に、血液ろ過透析療法が55.1%に用いられ、血液ろ過透析の割合が多くなっています。人工腎臓を用いた治療法は、年々進歩しており、より有効で副作用が少なく、それぞれの患者さまの病状に沿った治療法が工夫されています。