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よくわかる透析の基礎知識

2017.9.20

透析療法と予後(2)~Kt/V(尿素の標準化透析量)~

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

 1.至適透析とは
透析療法は1960年ごろから慢性腎不全の治療として発展し、当初の生命を維持する目的から、QOL(生活の質:Quality of Life)の改善、合併症の防止、長期予後の改善を目指す時代になっています。これらの目標を高めていくための最適な透析療法を「至適透析」といいます。薬剤などの助けなしに、透析だけで決定される至適透析の要素は、前回述べた透析時間をはじめ、血液流量、ダイアライザーの種類と大きさ、尿素が透析で除去される量の指標(Kt/Vなど)があります。これらの要素を適正にしていくことで至適透析が達成されます。

2.Kt/V(尿素の標準化透析量)
尿素はタンパク質が分解された最後の代謝産物で、分子量が60と小さく、細胞膜を自由に通過でき、体液中に均等に分布しています。このため透析効率の指標として使われています。Kt/Vは一回の透析前後の血中尿素窒素(BUN)と透析時間、除水量、透析後体重などから複雑な対数計算式で算出され、透析効率を示す指標として使われます。

3.Kt/Vと予後
日本透析医学会のガイドラインで透析効率の指標としてKt/Vが推奨されています。最低でも1.2を確保し、目標として1.4以上が望ましいとされています。2010年の透析医学会の統計調査の報告では、Kt/Vを1.2から1.8以上まで上昇させると死亡リスクが低下すること(図1)、但し、透析時間が4時間未満の場合は、Kt/Vを増加させても死亡リスクは軽減せず、むしろ、リスクの上昇が示されていることから、透析時間は4時間以上を維持しながらKt/Vを高めることが必要と考えられます。

また、前回述べたDOPPSでもKt/Vは死亡リスクに対して、他の要素とは独立した関連が示されています。Kt/Vが0.1増すごとの死亡リスクが2%低下します。さらに、透析時間が長く、Kt/Vが高いほど死亡リスクが低下することが示されています(図2)。

 

4.Kt/Vを高めるには?
善仁会グループでは、毎月、Kt/Vを計算しています。Kt/Vを最低でも1.2、1.4以上を目標にしています。もし、Kt/Vが1.2以下の時はどうすればいいのでしょうか。透析時間が4時間未満ならば、まず第一に4時間以上に延長することが必要です。次に、血液流量やダイアライザーを検討します。次回は、血液流量やダイアライザーと予後について述べたいと思います。

 

参考文献

  1. 維持透析ガイドライン:日本透析医学会雑誌46(7)、2013
  2. 包括的腎代替治療:新興医学出版社、2012
  3. DOPPS 透析臨床にもたらしたimpact:日本メディカルセンター、2013
  4. 日本透析医学会雑誌43(7):551-559、2010