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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2022.11.18

リンについて(2)―高リン血症の治療―

吉祥寺あさひ病院
院長 有村 義宏

前回、高リン血症を改善させることで、骨を丈夫にして、動脈硬化を防ぎ、若さを保つことができるとお話しました。透析患者さまでは、透析前の血液中のリンを3.5mg/dLから6.0mg/dLの間に調節します。

高くなったリンを下げるには、3つの方法があります。十分な透析、リンの少ない食事、リンを下げる薬の服用です。透析では人工腎臓を使って血液中のリンを取り除きますが、毎日休むことなく働いている腎臓にはかないません。このため食事療法を行い、ほとんどの場合に薬物療法も追加します。

リンには、食品自体に含まれる有機リンと食品添加物に含まれる無機リン(リン酸塩)があります。無機リンは有機リンに比べて腸から吸収されやすく(無機リン:約90%、有機リン:10~40%)、高リン血症を起こしやすいため、表1に示したファーストフードや即席麺など食品添加物入りの加工食品は、できる限り控えましょう。なお、麺のゆで汁を捨て、再度麺にお湯を注いだり、練りものは下ゆで後にお湯を捨て、煮汁で炊くなどの工夫でリンをある程度除くことができます。

有機リンは肉や魚、卵、乳製品など、たんぱく質の多い食品に多く含まれています。たんぱく質はたいせつな栄養源ですから控えすぎると栄養不良になります。このため、なるべくリンの少ないたんぱく質をとります。鶏のひき肉や卵白は、たんぱく質の量に比べてリンの割合が少なく(「リン/たんぱく質含有比」が低く)、チーズやヨーグルトは「リン/たんぱく質含有比」が高い食品です。表2に示すような、「リン/たんぱく質含有比」の低い食品と選びましょう。たんぱく質1g当たりリンは15mg含まれます。一般に、体重50~60kgの透析患者さまでは、60g/日までたんぱく質を制限します。すると、リンとしては60(g)×15(mg)=900mgまでとなります。

リンを下げる薬には、表3に示すようなリン吸着薬があります。リン吸着薬は、リンと吸着しやすい物質(カルシウム、鉄など)を含む薬で、消化管内でこれらの物質がリンにくっついて便として排泄され、腸からのリンの吸収を抑えます。リン吸着薬は、薬によって飲み方が異なり(食直前・食直後)、お腹の張りや便秘、下痢、便が黒くなる(鉄を含む薬)などを起こす場合があります。また服用量が多く、飲み忘れることもあります。副作用が出たときや薬が残ってしまったときには、必ず医師と相談してご自分に合う薬でリンをコントロールしましょう。