2022.2.9
貧血とは、血液の中にある赤血球の数や赤血球に含まれているヘモグロビン(血色素)が減っている状態をいいます。ヘモグロビンはヘムという鉄を含む赤い色素と、グロビンというたんぱく質が結合したものです。このため血液は赤くみえます。
透析患者さまにみられる主な貧血には、Ⓐ腎臓で作られるエリスロポエチンという造血ホルモンが少ないために起こる貧血(腎性貧血)と、Ⓑ鉄の不足のために起こる貧血(鉄欠乏性貧血)があります。Ⓐエリスロポエチンが少ないと骨髄での造血が少なくなり赤血球の数が減ってきます。赤血球の数が減ると、1個の赤血球の中のヘモグロビン量は変わらなくても、全体としてヘモグロビン量は減ることになります。Ⓑ鉄が不足すると赤血球の数が少なくなるだけでなく、赤血球1個1個に含まれるヘモグロビンの量も少なくなるため赤血球の色が薄くなり小さくなります。赤血球をサクランボに例えると、図1に示すようになります。このように、貧血の検査では赤血球の数(RBC)、ヘモグロビンの量(Hb)だけでなく、赤血球の濃さ(平均赤血球色素濃度:MCHC)、赤血球の大きさ(平均赤血球容積:MCV)を見ます。その他に網赤血球(できたての新しい赤血球)も見ます。網赤血球が多い時は赤血球が盛んに作られていることを示しています。
また、貧血の検査では鉄が不足していないかもみます。食べ物の中の鉄は腸で吸収され、血液の中をトランスフェリンという「運び屋たんぱく質」に結合して運ばれ、骨髄で赤血球の中のヘモグロビンを作ります。
トランスフェリンをバイク便、鉄を荷物に例えると、図2のように、血液の中には荷物を積んだバイク便(血清鉄)と、空(カラ)のバイク便(不飽和鉄結合能)があります。全部のバイク便の数は総鉄結合能(TIBC)と呼ばれます。トランスフェリン飽和度(TSAT)は、全部のバイク便(TIBC)の中で荷物(血清鉄)を乗せたバイク便の割合(%)です。血清鉄が少なかったり、TSTATが20%以下なら鉄欠乏状態と考えられます。血清フェリチンは鉄の貯蔵状態をあらわします。貯蔵庫には適量の鉄が保存され、出血や造血などで鉄が不足した時にはいつでも荷だしできる状態になっているのが適切です。
表1に貧血に関する検査項目を示します。