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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2023.8.28

食塩と水の深い関係 ーどれだけ食塩をとっていいの?ー

吉祥寺あさひ病院
院長 有村 義宏

ヒトの体の60%は水分でできています。その水分のうち60%は細胞の中に含まれ、40%は細胞の外にあります。細胞外の水は「細胞外液」といい、血液や細胞と細胞の間などにあります。この細胞外液には約0.8%(1 Lだと約8 g)の食塩が含まれています。汗も細胞外液なのでしょっぱい味がするのはこのためです。

細胞外液の塩分濃度は、細胞の働き、生命を維持するのにとても重要です。ヒトは食塩を多く摂取すると喉が渇いて水を飲み、細胞外液の塩分濃度を一定にするようになっています。さらに、腎臓で尿を作り、余分な水や塩分を排泄します。しかし、透析患者さまは腎臓で尿を作れないので、食塩を多く摂取して喉が渇いて飲んだ水は体にたまり、体重が増加します。透析患者さまが透析間で増加した体重のほとんどは水分で細胞外液です。水分がたまると手足がむくんだり、時には肺に水がたまり息苦しくなったりします。

日本腎臓学会による透析患者さまの食塩摂取量は「1日6 g未満」が推奨されています。これは大切な基本です。一方で、その注釈には「尿量、身体活動度、体格、栄養状態、透析間の体重増加を考慮して適宜調節する」と書かれています。透析間の体重増加は、中1日で3%以内、中2日で5%以内が推奨されています。

体重40 kgで中1日(2日間)3%の体重増加は1.2 kgです。この1.2 kgが細胞外液とすると9.6 g(1日4.8 g)の食塩が含まれています。3日間5%の体重増加は2.0 kgとなり、食塩16 g(1日約5.3 g)が含まれています。つまり体重40 kgの透析患者さまが体重増加を許容範囲に収めるためには、食塩の摂取は中1日では1日4.8 gを、中2日では1日5.3 gを超えないことが必要です。

一方で、体重60 kgの場合には、中2日(3日間)で3%増加は1.8 kg、この中に食塩は14.4 g(1日7.2 g)含まれ、中2日(3日間)の5%増加による体重増加3 kgには24 g(1日8.0 g)の食塩が含まれます。このため、中1日では1日7.2 gを、中2日では1日8.0 gを超えない食塩の摂取が大切です。

上手に食塩を摂取して体重増加を適切に保ち、食事を楽しみながら透析ライフを過ごしましょう。