2020.12.3
透析患者総数は年々増加し、2018年末では約34万人(図1)、人口百万人あたり2,688人となっています。全透析患者の平均年齢は68.75歳、導入患者の平均年齢は69.99歳と高齢化が進んでいます(図2)。また、原因疾患は糖尿病が39%、腎硬化症が10.8%であり、高齢化とともに透析患者のQOL、ADL(注1)の低下につながっていると思われます。透析患者さまにとって、週3回の血液透析が必須であることもあり、日常の活動低下は避けがたい問題となります。透析導入前から、慢性腎不全によるQOL、ADLの低下は起こりやすく、栄養状態や体力、筋力などの身体機能の評価が重要であり、いかにしてそれらを維持するかが課題です。
フレイルの改善、進行阻止には、生活・栄養指導、薬物療法と十分な透析療法が必要なことは言うまでもありませんが、その上で、リハビリ(運動療法)が重要な役割を担っています。しかし、透析患者さまのリハビリだけではフレイル対策は不十分であり、栄養療法などを組み合わせて、体力の消耗を防ぐために、十分なエネルギー摂取(30~35kcal/kg)とタンパク質摂取(0.9~1.2g/kg)が勧められます。
透析患者さまのリハビリの目的は患者さまが活気のある生活を送り、長生きできることです。リハビリは次に挙げる様々な効果が期待され、フレイル・サルコぺニアの予防、進行阻止につながります。
① 運動能力と持久力の向上
② 心血管病の予防と心肺機能の改善
③ ADL、QOLの改善
④ 透析効率の改善(透析中リハビリ)
⑤ うつ状態やイライラなど精神状態の改善
⑥ 低栄養、貧血の改善
注1)
・QOL(quality of life)
・生活の質
・ADL(activity of daily living)
・日常生活の活動度
注2)
・フレイル
・①体重減少 ②疲労感 ③活動量低下 ④歩行速度低下 ⑤虚弱(握力低下)
・上記5項目で3つ以上当てはまる状態。
・サルコぺニア
・加齢にともない、骨格筋量の 減少、筋力の低下、歩行などの 身体機能の低下した状態。
出典:日本透析医学会, 日本透析医学会雑誌52(12), 2019, pp. 687.