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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2020.12.16

透析とコロナウイルス

横浜第一病院
院 長 大山 邦雄

中国での流行から始まった新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が、日本でも1月16日に第1例目が発症してから、その猛威は今もなお世界中で続いています。

2020年2月にダイヤモンドプリンセス号でCOVID-19感染症が発症し、集団感染化。
4月15日までに712例の感染が確認され、少なくとも14例が死亡(致命率2.0%)しました。
その後の対応でCOVID-19のPCR検査を積極的には行わず、発症者だけに検査をやればよいという考えが政府、専門家会議で続きました。このクルーズ船対応の時から、韓国などのように積極的なPCR検査の導入に政府や専門家会議が方針を変えていれば、日本でのCOVID-19感染症への対応と状況は大きく変わっていたと思いますが、4月初めに日本感染症学会と日本環境感染学会の理事長から「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方」という提言が出され、この中では「軽症者には基本的にPCR検査を推奨しない」と明言されています。

医療の基本は、早期診断、早期治療であることは言うまでもありません。現在、COVID-19感染症の唯一の診断方法はPCR検査です。現在、無症状感染者が多く存在し、その人たちによって感染が広がることもわかってきました。なおさら、PCR検査を幅広く実施することで感染者を早く発見し、他への感染を防がなくてはいけません。特に、透析患者さまは感染すると重症化しやすく、致死率も高いといわれています。可能な限り早期に感染者や感染疑いの方をみつけ、他と隔離した透析を行い、患者さま間の流行を防がなくてはなりません。

横浜第一病院では、院内感染を防ぐために、新規入院患者さまに対して表1のような問診票で疑い例を見つけ、コロナ抗原検査やPCR検査を実施するようにしました。透析患者さまでこのような症状などがある場合は、通院中のクリニックに電話で相談してください。現在、日本ではPCR検査の実施能力はいまだに不十分であり、時間がかかりますが、疑いのある患者さまは各クリニックである程度の隔離透析をし、他への感染の防止に努めていただきたいと思います。もちろん、透析中のマスクの着用は必須とお考えください。


COVID-19感染症はインフルエンザや感冒と同じと簡単に言う人がいますが決してそうではありません。インフルエンザはすでにワクチンが普及しており、タミフルなどの特効薬がありますが、COVID-19感染症はワクチンも特効薬もありません。ゆえに感染防止と予防が大事なのです。三密を避け、マスクの着用、手洗いの励行と早期発見しかないのです。表2に示すように、国内透析患者さま約34万人(2018年末時点)に対して感染者数は259人(感染率 約0.08%)であり、現在まで透析患者さまへの感染は幸いにも、それほど高率ではありませんが、徐々に増加しています。そして、発症者の致死率は特に高齢者では非常に高いのです。

神奈川県でも、医師会などでPCRセンターを設置して、以前よりは比較的簡単に検査を受けられるようになってきています。しかし、PCR検査も100%絶対的な診断方法ではありませんし、検査の翌日に感染者と濃厚接触があれば感染してしまうかもしれません。一度陰性であっても、その後も陰性であり続けることを保証するものではないことを理解して、常に上記のような予防を心がけることが重要です。

※本稿は2020年9月末時点の諸情報に基づいています。