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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2019.11.22

慢性腎臓病(CKD)~慢性腎不全(CRF)~ 透析と食事療法(1)

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

栄養と食事療法は医療者、患者さま両方にとって重要で難しい課題です。多くの患者さまにとって食事療法=食事制限と受け取られています。透析療法に入る前の患者さまは、水分・塩分制限、カリウム制限、タンパク制限などについて、耳にタコができるほど、医師、看護師、栄養士に注意されていたことでしょう。そして、これらの食事制限は多少甘くなりますが、透析導入された後も注意が必要です。このような食事制限は、なぜ必要なのでしょうか。腎臓の働き(ふれあいNo.202参照)が障害されてくると、老廃物の排泄、水分・塩分・電解質のバランス、リンの排泄などは食事と密接に関連しており、体の状態を一定に保つことが難しくなるため、どうしても食事療法が必要となります。水分・塩分については、ドライウェイト(DW)のお話(ふれあいNo.210)で触れていますので、今回は栄養・エネルギー(カロリー)とカリウムやリンについて考えていきたいと思います。
まず、透析患者さまの食事(栄養)には何が大切なのでしょうか(表1)。

① バランスの良い食事―3大栄養素(炭水化物、 脂肪、タンパク質)
② 十分なエネルギー(カロリー)摂取
③ 水分塩分の取り過ぎに注意―ドライウエイト(DW)に直結
④ カリウムの取り過ぎに注意
⑤ リン、タンパク質の取り過ぎに注意

このようなことをいつも注意されていると思います。

1.バランスの良い食事
3大栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)をバランスよく摂ること。一般に炭水化物60%、脂肪20~30%、タンパク質10~20%と言われています。このバランスで必要なカロリーを摂取することが大切です。特に慢性腎不全の患者さまは透析に入る前に腎機能の保持、尿毒症症状の抑制のために強いタンパク制限が指導されます。これが透析に入ってからも、血清リンの上昇を抑えるためにタンパク制限が必要になります。しかし、強すぎるタンパク制限は筋肉などの体の支持組織の減少を招き、体の虚弱が進む危険もあります。日本透析医学会の基準では一日0.9~1.2g/Kg体重のタンパク摂取が勧められています。このように、タンパク質にはリンが多く含まれるために、摂取する上限が1.2g/Kg/日とされており、これは全体のエネルギーの約20%になります。

2.十分なエネルギー(カロリー)摂取
エネルギー摂取は、摂り過ぎは肥満に、不足はやせ(るい痩)を招きます。適当なカロリー摂取を維持することが重要です。エネルギー摂取量と消費量が釣り合っていれば、DWは一定に保つことができます。維持透析患者さまではエネルギー必要量は一日30~35Kcal/Kg標準体重とされています。DWの話でも触れましたが、エネルギー摂取量が少なすぎて透析間の体重増加が少ない患者さまでは、本来の体重としては痩せてきているはずなのに、DWが維持されたままでいると、体に水分だけが貯まることになり、心不全やむくみの原因となるわけです。透析患者さまの痩せ(エネルギー摂取不足)は生命予後も悪くなることが示されていますので注意しなければなりません。

次回は、カリウム、リンについて述べます。