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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2020.10.15

慢性腎臓病(CKD)~慢性腎不全(CRF)~透析と食事療法(3)

横浜第一病院
院 長 大山 邦雄

透析と食事療法の最後はリン(P)のお話です。慢性腎不全や透析の患者さまにとって食事療法は最も大事な治療であり、自己管理の最重要課題です。これまで、何度もお話したように腎臓が働かなくなると人体の多くのバランス(ホメオスターシス)が維持できなくなり、老廃物などの毒素が体内に蓄積します。その蓄積を最小限にするためには、腎臓で排泄しなければいけない物質を食事としてなるべく摂取しないことです。そのために、水分、塩分、カリウム、タンパク質、リンの制限が必要となります。

【リン制限】
尿中に排泄されるべきリンは腎不全、透析の患者さまでは体内(血中)に溜まり血液中のリン濃度が上昇します。
リンは体を構成しているタンパク質に含まれています。ヒトの体内のリンの総量は0.7~0.8kgで、多くはカルシウムと結合して骨にありますが、タンパク質として体のすべての組織にも含まれており、ヒト以外の動植物でも同じです。リン摂取量はタンパク質摂取量と相関します。タンパク質1g当たりリンは15mg含まれます。ですから、リン制限=タンパク制限と考えられるのです。食事として摂られるリンには、動植物性食品に含まれる有機リンと食品加工などで添加される無機リンがあります。体内で利用される割合は有機リンの場合、植物性で20~40%、動物性では40~60%、無機リンは100%と考えられています。よって、利用率の高い動物性タンパク質と食品添加物の多い冷凍食品や加工食品は特に気をつけなくてはいけません(図1)。

タンパク質とリンの一日摂取量はどれ位に制限するべきでしょうか。一般に、体重50~60 kgの人ではタンパク質60g/日までに制限します。リンとしては60(g)×15(mg)=900mgまでとなります。その中でもリン利用率を考えると動物性タンパク質と冷凍・加工食品には特に気をつけましょう。
リンが余分に体内に溜まるとどうしていけないのでしょうか。尿中にリンが排泄されなくなると高リン血症となり、ビタミンD活性の低下、低カルシウム血症、副甲状腺ホルモンの上昇が起こり、骨がもろくなって骨折し易くなります。また、余分なリンはカルシウムと結合して骨以外の場所に沈着して石灰化をおこします。特に、心臓や血管の石灰化は動脈硬化を促進し、心筋梗塞などの心臓・血管系の病変を引き起こします。このような事から高リン血症(6.0mg /dl以上)の患者さまは予後不良であることが示されています。
透析患者さまの中でリンが6.0mg/dl以上の方は注意を喚起して、食事療法を強化する必要があります。
高リン血症の治療の基本は食事療法です。補助的に血中リン濃度を下げる薬も6種類ほど開発されています。これらの薬を、副作用を考慮して適切に使用することも必要です。一方、リン制限を気にしすぎて、食事量が少なすぎるとカロリー不足から体力も低下してしまいます。リンの血中濃度が2mg/dl以下の低リン血症でも、予後不良が示されています。
繰り返しますが、高リン血症の基本は食事療法です。適度なタンパク制限をしつつ、リンの血中濃度が上昇する場合は、食事の見直しを栄養士と相談し、リン吸着薬を服用して血中濃度を3.5~6.0mg/dlに維持するようにしましょう。