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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2022.9.7

リンについて(1)ー高リン血症ー

吉祥寺あさひ病院
院長 有村 義宏

リンは岩や土に含まれるミネラルです。漢字では「燐」と書き、赤燐はマッチに使われ炎となります(図1)。英語ではフォスフォラス(phosphorus)といい、ギリシャ神話の「光を運ぶ者(フォス は光、フォラスは運ぶもの)」という言葉に由来しています。

リンは植物や動物の細胞活動、生命活動に欠かせない必須ミネラルで、生き物はリンがなければ生命を維持することはできません。また、リンはカルシウムとともに骨を構成し、体の構造を維持しています。

ヒト成人のからだには、体重の約1%に相当する600~700gのリンがあり、その85%は骨の中にあります。骨はリンとカルシウムの貯蔵庫としての役割も持っています。リンは、からだの中で作り出すことはできないため、肉や魚、野菜、海藻などの食物から取り入れます。食物の中に含まれるリンは腸から吸収され、血液を流れてからだの隅々で使われ、骨に蓄えられ、余った分は尿に排泄されます。透析患者さまでは、腎臓の働きが低下するため尿にリンを排泄できなくなり、血液中のリンが上昇します。また、腎臓でビタミンDを作りにくくなり、腸からのカルシウム吸収が低下して低カルシウム血症になります。血液中のリンとカルシウムの濃度を調節し、一定に保っているのは、主に腎臓と副甲状腺です(図2)

副甲状腺ホルモン(PTH)は、腎臓に作用して尿からリンを排泄させ、血液中のリンを下げる働きがあります。しかし、腎臓の働きが悪くなると、副甲状腺ホルモンがいくら分泌されてもリンは下がらなくなります。さらに血液中のカルシウムのバランスをとるため骨のカルシウムが血液の中に溶け出し、骨がもろくなります。

過剰なリンと骨から出てきたカルシウムは、結合して小さな粒(リン酸カルシウムのコロイド粒子:CPP)となって血管の壁にくっつき、血管はガチガチになります(石灰化による動脈硬化)。動脈硬化は心臓や足などへの血液の流れを悪くして、心不全、心筋梗塞、足の壊死などを引き起こします。このような状況を、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)といいます。

このように、高リン血症はからだにさまざまな悪影響をもたらしますが、高リン血症を改善させることで若さが保たれ、寿命が延びると報告されています。次回は、血液中のリンを下げる方法についてお話しします。

からだに重要なリンには、遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)や体のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)、細胞膜の主要成分のリン脂質などがあります。