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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2018.5.28

ドライウェイトのお話(1)

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

1.人の体重とは?
 人の体重の60%は水と言われています。即ち体重50kgの人では30kgが水で、残りの20kgは各臓器、筋肉や脂肪などになります。そして、水の割合は赤ん坊では高く、年齢とともに高齢者では低くなります。また、太っている人(脂肪の多い人)は脂肪細胞の水分含有量が他の細胞より少ないために、水分の比率が低いと考えられます。しかし、腎機能が正常であれば、個人個人で水の占める割合は一定に保たれます。これは腎臓が尿として余分な水を排泄するように働くからです。
透析患者さまはこの腎臓の働きが強く障害されているため、体内の水分調節が出来ずに余分な水が体内に溜まり、むくんだりします。一方、尿がまだ出ている患者さまで、食事がとれなくなったり、水分補給が足らない時は体内の水が足りなくなり脱水状態になります。人の体重のうち臓器や筋肉、脂肪など水分以外のものは一日二日では変化しませんので、透析間の1~2日の体重の変化は主に水分によると考えられます。

2.水の出入りについて
 成人の1日の水の出入り(出:out,入り:in)はどうなっているのでしょうか(表1)。
体内に入ってくる水(in)は、食事や飲水で口から入るか、注射や点滴で直接血管内に入るものです。それと、摂取された糖、脂肪、タンパク質などが体内で代謝・分解されるときに出る水分(代謝水)です。体から出ていく水(out)は、尿と便のほかに汗や呼吸で出ていく不感蒸泄があります。表1に示すように、正常(健康)な人ではinとoutは同じ量で保たれています。そして、通常の活動状態では、代謝水と便や不感蒸泄は一定と考えられ、口から入ってくる水の量によって尿量が変化して、水のinとoutのバランスが腎臓の働きで維持されているわけです。ですから、腎機能が低下してくるとこの調節機能が障害されて、水のin-outのアンバランスが起こります。

3.透析患者さまの水バランス
 腎臓の働きで、体内に水をためこむ機能を濃縮能(濃い尿)、水をより多く出す機能を希釈能(薄い尿)と言いますが、透析患者さまでは濃縮能、希釈能が著しく障害されており、多くの患者さんで尿量が少なくなり、十分な尿が出せなくなります。逆に、尿量がまだ保たれている患者さまでも濃縮できずに必要な水まで出てしまうこともあります。このように、透析患者さまでは、表1に示したような水のバランスが保てなくなり、透析療法によりバランスを維持する必要があります。
通常、透析を続けていくと尿量は減少し、ほとんど出なくなります。そうすると、表1の1日尿量約1000ml(1kg)の水が体内に溜まり、浮腫や胸水、腹水となり、高血圧や心不全を引き起こしてきます。このように透析患者さまでは、通常の状態であれば、透析と透析の間の体重の増加(変化)は主に口から入った水の量で決まってきますので、透析後と前の体重の増加(変化)をみて、透析中の除水量が決められます。この時の基本となる体重がドライウェイト(Dry Weight:DW,基礎体重または目標体重)となります。