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よくわかる透析の基礎知識

2017.3.22

オンラインHDF① -オンラインHDFの基礎-

吉祥寺あさひ病院
院長 多川 齊

オンラインHDFとは、血液浄化療法の一種です。1990年代から一部の施設で採用されてきましたが、2012年の診療報酬改定で正式に健康保険に適用されてから急速に増えてきました。善仁会グループでも、2017年3月現在で1391名の患者さまがオンラインHDFによる治療を受けておられます。

1.HD(血液透析)とHDF(血液濾過透析)

1) HD(血液透析)
透析と呼ばれている治療法の主流です。1968年に健康保険が適用されてから、すでに46年の歴史があります。血液をダイアライザーに通して透析液と接すると、尿素窒素やクレアチニンなどが透析膜にあいているごく小さい穴を通って透析液に滲み出てきます。この性質を利用して体内に蓄積した尿毒症物質(尿毒素)を除去し、あわせて半強制的に除水します。しかし、尿毒素には、尿素窒素やクレアチニンだけではなく、分子量がもっと大きい物質も含まれることが明らかになり、透析膜の穴を大きくして分子量が大きい物質も除去できる高性能の透析膜が開発されてきました(穴といっても、血液中の重要な成分である赤血球や蛋白質などは抜けません)。
2) HDF(血液透析濾過
大量の水分を容易に濾過できる膜を使って体液の一部を廃棄し、同時に大量の補充液を体内に注入する、いわば古い体液を新しい体液に置き換える方式です。自動化された機器によって水分バランスを計測し、体液の過不足がないように監視します。

①オフラインHDF:点滴注射のように吊り下げたボトルから補充液を注入します。たくさんのボトルを準備しなければなりませんから、交換する体液量はたかだか10L前後です。
②オンラインHDF:大量の体液(25~50L)を除去し、その代わりほぼ等量の透析液を体内に注入して体液を補充します。

HDFは、透析膜の進歩、水分バランスを精密に管理できる透析機器の発達などの技術革新から生まれました。とくに、大量の補充液を使用できるオンラインHDFは目的にかなっています。オンラインHDFでは、大きな分子量の尿毒素が血中から透析液へ抜ける代わりに、透析液から不純物質や細菌が血中に混入するおそれがあるため、透析液を注射液並みにきれいにする清浄化の技術が採用されています。
オンラインHDFの補充液は、血液が濾過器に入る前に注入する方法(前希釈)と、濾過器で水分を濾過した後に注入する方法(後希釈)があります。それぞれ特徴があり優劣をつけがたいのですが、わが国のオンラインHDFでは前者、欧米では後者が一般的です。

2.HDFは、分子量が大きい尿毒素も
  効率よく除去する
HDFは、分子量が大きい尿毒素を効率よく除去することができます。しかし、尿素窒素やクレアチニンのように分子量が小さい尿毒素を除去する効率はHDより劣るため、HDを併用して、分子量が小さい物質から大きい物質まで広範囲の物質を取り除くことができるように工夫されています。濾過と透析という原理を併用することから、HDF(血液透析濾過)と名づけられています。
かつて、HDFは、β2ミクログロブリン(β2MG)というアミロイドの原因物質を除去する効率が高く、血中β2MG濃度30mg/L以下という暫定的な目標値を達成しやすいため、アミロイドーシスの予防と治療を主目的として使われました。しかし、その後透析膜の進歩によってHDとHDFの差が小さくなったため、HDFはさらに分子量が大きい蛋白質の一種であるアルブミンと同じサイズの尿毒素まで取り除くことを目指して発展してきました。

(「オンラインHDFのメリット」につづく)