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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2020.9.16

慢性腎臓病(CKD)~慢性腎不全(CRF)~ 透析と食事療法(2)

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

慢性腎不全や維持透析中の患者さまにとって、食事療法といえば、タンパク制限、カリウム制限、塩分・水分制限がまず指導されます。前回の『ふれあい』でバランスの良い食事、十分なカロリー補給の重要性について述べました。今回はカリウムについてです。

【カリウム制限】
『慢性腎臓病(CKD)~慢性腎不全(CRF)~ 透析と食事療法(1)』で表に示したように、透析患者さまの食事摂取基準でカリウム摂取は1日2,000mg以下とされています。主な食品のカリウム含有量は下図の通りです。

腎不全の患者さまに、なぜ食事のカリウム制限がうるさく言われるのでしょうか。血液中のカリウム濃度が基準値(3.5~5.5mEq/L)を超えて上昇すると、四肢脱力、口唇周囲のしびれ、知覚異常などの症状が出てきますが、最も注意が必要なのは心臓への影響です。不整脈などの心電図異常から心室性期外収縮、心停止という重大な悪影響が生じ、突然死の原因になるからです。末期腎不全では腎臓から尿へのカリウム排泄が減少するため簡単に高カリウム血症をきたします。このカリウムの上昇は食事で摂取されるカリウム量に一番左右されます。このため、腎不全ではしつこく食事のカリウム制限を指導されるのです。

カリウムは動物でも植物でも細胞内に多く含まれています。生の肉や魚、野菜、果物を多く食べれば血中カリウム濃度は簡単に上昇します。このため、生食品ではなく、煮たり茹でたり、水に浸したりして、細胞内のカリウムをできるだけ除去してから食べることが大事になります。魚や野菜、果物は生で食べることが多いので注意が必要です。生野菜のサラダは控えましょう。果物はほとんど生で食べるでしょうから、最も注意が必要です。

血液透析の患者さまは4時間の透析でカリウムは簡単に除去されますので、果物をどうしても食べたいときは透析前に食べるのもいいでしょう。CAPD(持続的腹膜潅流)の患者さまは常に腹水にカリウムが移動しますので、血液透析の患者さまよりカリウム制限は緩くてよいでしょう。

血中カリウム濃度が基準値を超えて、6mEq/L以上になると心電図に変化が出て不整脈の危険が増してきます。さらに放置すると致死性不整脈から突然死の危険があるので透析患者さまにとってカリウム制限は絶対に必要です。

カリウムをなるべく摂取しないようにするためには、先に述べたように、細胞内のカリウムを外に出してから食べることです。細胞膜を壊して細胞内のカリウムを取り除くために、野菜を食べる時は、茹でたり、煮たり、長時間水に浸してから食べるようにしてください。この時、茹で汁、煮汁は飲んではいけません。もちろん、野菜ジュース、果物ジュースは控えた方がよいでしょう。果物の缶詰も汁は捨ててください。お茶、紅茶、コーヒーなど葉っぱや豆で出す飲み物にはカリウムが多く含まれますので取り過ぎないようにしてください。

カリウムは茹でこぼすと約30%、水にさらすと約10%減らすことができます。しかし、茹でてもカリウムが減りにくい豆類、イモ類、トウモロコシは注意してください。

腎不全の患者さまにとって、心臓に大きな悪影響を及ぼし、心停止の危険のあるカリウムは厳重に管理する必要があります。食事でカリウム制限を一生懸命にやっても血中カリウム濃度が上昇する患者さまには、透析以外に、カリウムを下げるケイキサレートやカリメートなどのイオン交換樹脂の薬を経口投与や注腸投与する場合がありますが、緊急透析の適応となることがあります。