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医療トピックス

2021.11.5

腹膜透析(CAPD)について (3)~ 腹膜透析の現在~

横浜第一病院
内科診療部長 田山 宏典

透析療法には血液透析と腹膜透析の2種類がありますが、体質・ライフスタイルなどの患者さまの状態・意思に合わせて透析療法を選択することができます。血液透析と腹膜透析の比較を表1に示します。


1回4時間程度・週3回の間欠的な透析療法である血液透析と異なり、腹膜透析は、毎日持続的に行う透析療法であるため、食事中のカリウム制限はありません。また、透析による1日あたりの除水量は少なく、血液透析のような除水に伴う血圧低下や下肢つりなどの合併症もありません。
腹膜透析の特有の合併症には、細菌が腹膜透析カテーテルを通じて腹腔に侵入して発症する腹膜透析関連腹膜炎やカテーテルの出口部感染、被嚢性(ひのうせい)腹膜硬化症などがあります。腹膜炎や出口部感染は通常は抗生剤治療で改善しますが、被嚢性腹膜硬化症は、腹膜と腸管が癒着してしまい、腸の動きが悪くなり、腸閉塞のような症状が出てしまう難治性の合併症です。腹膜透析期間の長期化や腹膜透析関連腹膜炎の既往・高濃度ブドウ糖透析液の使用等による腹膜の劣化が主な原因と考えられております。
1983年頃、日本で普及し始めた頃の腹膜透析液は、内容物を安定して保存するため酸性液でしたが、透析液バック内に隔壁を作り、内容物をアルカリ性と酸性に分けて保存することで、透析液を腹腔に注入する直前に隔壁を外し混ぜあわせ中性化することが可能になり、腹膜への負担が軽減されました。また、透析液を交換する際に腹部から出ているカテーテルに透析液を無菌的に接合・切り離すことが無菌接合器によって可能となり、腹膜炎の発症率も低下しております。また、自動腹膜透析装置の使用にて、腹膜透析交換回数が減ることによって、腹膜炎のリスクがさらに軽減しております(図1)。さらに、腹膜透析と週1回の血液透析を併用することを、血液透析併用療法または、ハイブリッド療法といいますが、週1回の血液透析を行った日は腹膜透析を行わないため、腹膜を休ませることができ、腹膜劣化を和らげることができます。

現在の日本では、被嚢性腹膜硬化症は、大変まれな合併症となりました。腹膜透析は、血液透析とは異なり、血管に針を刺さずに、自宅または職場にて自分自身で行っているため、通院困難や寝たきりの高齢者や血液透析に必要な内シャント血管などが作成困難な患者さまも透析療法を継続して行くことができます。

また、災害による大規模停電・断水や院内感染等にて、病院やクリニックで血液透析が困難になった場合も継続が可能です。ハイブリッド療法が可能になり、無尿状態になったとしても、血液透析を週1回併用することで、十分な除水をすることが可能となり、腹膜透析継続が容易になりました。