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よくわかる透析の基礎知識

2017.3.27

CKD ~慢性腎不全~ 透析療法(3)

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

CKD G5(末期腎不全。参照)になると、多くの異常が現れてきます。腎不全で、体の恒常性が保てなくなり様々な症状が現れる状態を尿毒症と言います。尿毒症では浮腫、心不全、肺水腫など循環器系の症状から、食欲不振、嘔気嘔吐などの消化器症状、不穏、意識障害などの精神神経症状、高カリウム血症、アシドーシスなどの電解質、酸・塩基平衡の異常など、全身に様々な症状が出現し、心不全、高カリウム血症、意識障害などは致死的な危険を伴います。ですから、慢性腎不全ではこの様な重篤な症状が出る前に透析療法に入ることが勧められ、厚労省から透析導入基準が示されています(表1)。


Ⅰ.腎機能、Ⅱ.臨床症状、Ⅲ.日常生活障害度の3項目をそれぞれ重症度に応じて、30,20,10点の3段階に分けて点数化して、その合計点が60点以上を透析導入の基準としています。腎機能の障害程度だけでなく、臨床症状や日常生活の障害が加味されることにより糖尿病などの合併症を持つ方や高齢者など腎機能に比して臨床症状や日常生活に支障をきたしやすい患者さんを考慮して、透析導入時期を検討することになっています。

日本透析療法学会の維持透析ガイドライン(血液透析導入2013年)でも、ほぼ同様の指標が示されており、生命予後の観点からの考察が示されています(表2)。

さらに、臨床症状(腎不全症候)や日常生活の活動度低下に関して具体的なものが示されています(表3,4)。

ここで示されている症状は透析導入後も透析不足や体調不良、自己管理不良によって現れることがあるので、よく覚えておいてほしいものです。血清クレアチニン8以上(eGFR10以下)で臨床症状や日常生活の障害度(活動度低下)を総合的に判断し、重篤な症状(心不全や意識障害など)が出る前に透析導入することが、その後の活動性や生命予後によいと考えられています。

慢性腎不全の透析療法には血液透析と腹膜還流という二つの方法があります。それぞれに特徴がありますが、その違いについてはいずれに述べるとして、透析導入のためにはいつごろから、どのような準備が必要なのでしょうか。血液透析では内シャントという、主に上肢で動脈と静脈を吻合する手術が必要ですし、腹膜還流では腹腔内に還流用のカテーテルを挿入する必要があります。そして、血液透析のための内シャントは透析導入の1か月以上前に作っておいた方がよいとされています。即ち、血清クレアチニンが8以上に上昇またはeGFRが10以下になる前から内シャント作成の準備をすることが望ましいという事です。このように考えると、CKDG5(eGFR<15)になった頃から、透析療法がなぜ必要か、どういう種類があり、どのような準備が必要かなどを知っていただく必要があり、私は外来診察の時にお話して理解して頂くようにしています。