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よくわかる透析の基礎知識

2017.11.8

透析療法と予後(3)~血液流量・ダイアライザー~

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

前回のコラムで、QOLの改善、合併症の防止、長期予後の改善を目指す最適な透析療法を「至適透析」というと述べました。そして、至適透析を達成するための条件(透析条件)と指標として、「透析時間4時間以上」と「Kt/V1.4以上」が必要でした。今回はKt/Vを1.4以上に維持するための方法として、血液透析(HD)の血液流量とダイアライザーの膜面積について述べます。

 

1.血液流量(Qb)と予後
患者さまがHDを開始するときには、血液を透析器(ダイアライザー)に通して体内に戻すために2本の針をシャント血管に刺して、血液回路につなぎます。次に動脈側の針から透析器のポンプによって血液を取り出してダイアライザーを通し、静脈側の針から体内に戻します。この時、血液を取り出すポンプの回転速度により血液回路~ダイアライザーの中を流れる速度(血液流量Qb)を調節します。この速度が高ければ高いほど、ダイアライザーで浄化される血液量が増えるわけで、透析効率が上がることになります。即ち、Qbによって、1回のHD(約4時間)で浄化される量が決まることになります。

実際のHDではどうでしょうか。HDを導入された初期では、不均衡症候群を防ぐため、Qbは100ml/分というゆっくりした速度で導入して行きますが、安定した維持透析では150~250ml/分が一般的です。Qbを増やすことにより、1回の透析量が増加し、Kt/Vの上昇が期待できます。

透析医学会の統計調査では、Qb200~220ml/分を基準として、それより少ないQbでは死亡リスクが高く、多ければ死亡リスクが低い傾向が示されています(図1)。

 

2.ダイアライザーの大きさ(膜面積)と予後
次に、HDの本体ともいえるダイアライザーの大きさ(膜面積)についてです。血液がダイアライザーを通るときに、血液が接する透析膜の面積の合計を膜面積と言います。この膜面積が大きい程、通過する血液の浄化量が増すことになります。よって、膜面積が大きい程、透析効率(Kt/V)が増加します。Qbと同様に透析医学会の統計調査では、膜面積1.4~1.6㎡を基準にすると、それより小さい膜面積では死亡リスクがやや高く、1.4以上では死亡リスクは変わらなかったことが示されています(図2)。

3.血液流量と膜面積の限界
血液流量と膜面積は患者さまの全身状態、体格、血圧の状態などにより決められていきます。特に心機能の悪い方、血圧の低い方、血圧が下がりやすい方は血液流量を下げ、膜面積を小さくして心臓の負担や血圧への影響を軽減する必要があります。この様なときに透析効率を上げるには、透析時間を延ばすしかありません。

 

4.透析療法(透析条件)と予後のまとめ
これまで、3回にわたって述べてきましたように、透析患者さまの予後は透析時間と透析効率(Kt/V)に影響されます。そして、Kt/Vは血液量とダイアライザーの膜面積で変わります。透析時間4時間以上、Kt/V1.4以上で予後の改善が期待できます。心機能、低血圧などで血液流量や膜面積を増やせない方は透析時間を4時間から5時間に増やすことを考える必要があります。このようにして、QOLを保ち、快適な透析ライフを過ごすために、「至適透析」を維持できるように、患者さまも医療者側も協力して考えていかなくてはなりません。

 

参考文献

1.鈴木一之ら:血液透析条件・透析量と生命予後―日本透析医学会の統計調査結果からー 日本透析医学会雑誌43(7):551~559、2010