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よくわかる透析の基礎知識

2017.7.18

透析療法と予後(1) <透析時間は何時間必要でしょうか?>

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

透析療法と患者さまの生命予後との関係として、国際的に非常に大規模なDOPPS(注)という研究があります。欧米や日本など、現在20か国以上が参加して、透析療法における色々な要素 ―例えば透析効率として透析時間や血流量、Kt/Vなど、検査データではカルシウム、リン、PTH(副甲状腺ホルモン)、ヘモグロビン値など― と生命予後との関係を、透析療法中の実際のデータを蓄積して検討した研究です。これによって、透析療法はどのように行われるのが、患者さまの予後によい効果をもたらすかが示されました。今回はその中から透析時間を取り上げてみます。

我々の腎臓は24時間365日持続して働き続けて、体に溜まる老廃物を尿として排泄しています。が、腎臓がほとんど機能しなくなった患者さまでは、血液透析を行い、ダイアライザーを通して、血液中の老廃物を取り除きます。一般的に、血液透析は一回4時間~5時間、週3回行います。という事は、正常な腎臓は一週間に24時間×7日=168時間/週 働いているところを、血液透析では4~5時間×3回=12~15時間/週で賄おうというわけです。これで、十分とは言えないでしょうが、普通の社会生活を送るために最低限必要だと考えられています。これより少なすぎれば色々な尿毒症症状が出てきますし、多すぎれば普通の社会生活が著しく損なわれてしまいます。現在の日本の医療保険制度では月14回(週3回4週+2)の血液透析が認められています。

DOPPSでは、一回4時間以上の透析とそれ以下の透析との比較で生命予後が検討されています。それによると、4時間以上の患者さまに比べて、4時間未満では1.19~1.34倍と死亡リスク(危険度)が有意に高くなります(図1)。4時間以上の患者さまの全死亡リスクは19%、心血管系の異状による死亡リスクは16%低くなります。さらに、日本透析医学会の2009年の統計調査による透析時間の解析でも、5時間未満の透析時間では透析時間が短いほど死亡リスクが増大することが示されています。

これらの結果から、2013年日本透析医学会の「維持透析ガイドライン:血液透析処方」で、透析時間は4時間以上が推奨されています。このガイドラインの中で、週3回、1回3~5時間の一般的な透析条件において、平均的な1回4時間の透析を基準とすると、それより短い透析時間では短いほど死亡リスクが高くなり、逆に長いほどリスクが低くなると言われています。

我々善仁会グループの透析患者さまで検討したところ、4時間以上に比べて、4時間未満の患者さんの死亡リスクが1.3~1.5倍高くなっており、DOPPSとほぼ同じ結果でした。

現在、善仁会グループの透析患者さまでは約15%の患者さまが4時間未満の透析になっています。いろいろな理由があるとは思いますが、維持透析を受けておられる患者さまの生命予後という点から考えて、4時間以上の透析を受けられることをお勧めいたします。

 

(注)DOPPS:Dialysis Outcome and Practice Patterns Study   透析の予後と診療内容の関連に関する研究

 

参考文献

  1. 維持透析ガイドライン:日本透析医学会雑誌46-7、2013
  2. 包括的腎代替治療:新興医学出版社、2012
  3. DOPPS 透析臨床にもたらしたimpact:日本メディカルセンター、2013