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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2020.11.11

透析と貧血(1) ~腎性貧血とは~

横浜第一病院
院 長 大山 邦雄

慢性腎臓病(CKD)、特に腎不全に進行したCKD患者に伴う貧血を腎性貧血と言います。貧血とは血液中の赤血球が減った状態をいいますが、その種類と原因は多数あります。

主に、
1.出血・先血による貧血
2.白血病など骨髄性の貧血
3.鉄欠乏性貧血
4.腎性貧血
5.その他(ビタミンB12・葉酸欠乏など)

があります。透析患者さまにみられる貧血は腎不全による腎性貧血と鉄欠乏性貧血が主なものです。

赤血球は主に骨髄で造られますが、その時必要なものは鉄とエリスロポエチン(EPO)です。赤血球は、血液中に酸素を取り込んで、肺から全身の組織に酸素を運ぶ役割をしていますが、その酸素を取り込むのが赤血球中のヘモグロビンというたんぱく質で、鉄を含んでいます。体の鉄が不足するとヘモグロビンが減少し、赤血球の数も減り小さくなります。これが鉄欠乏性貧血です。骨髄で赤血球が造られるときに、このEPOというホルモンが必要です。EPOは主に腎臓で産生、分泌されています。腎不全が進行するとこのEPOの産生が低下し、その結果、骨髄での赤血球の産生が低下し貧血となります。これが腎性貧血です。
一般に、貧血の診断基準はヘモグロビン値(Hb値)が使われ、日本人では(表1)のように示されます。CKDの場合、腎不全の進行に伴って、腎性貧血が進行して、保存期からEPOの補充療法が必要となります。多くの透析患者さまではこのEPO補充療法がおこなわれています。この場合、透析患者さまの貧血はどの範囲に維持するのが良いのでしょうか(表1)

参考文献
2015年版日本透析医学会 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療ガイドライン:日本透析医学会雑誌 49-2、2016

透析患者さまのHb値は10g/dl以上、12g/dl未満に維持することが、日本透析医学会のガイドラインで、生命予後の観点から推奨されています。透析患者さまの生命予後を比較すると、Hb値10~12g/dlを基準に、10g/dl未満では死亡リスクが高い傾向があり、12g/dl以上でもやや死亡リスクが高いことが示されているからです。透析患者さまの貧血は、出血や骨髄の病気などCKD以外に、貧血の原因となる異常が無い場合に腎性貧血と診断されますが、鉄欠乏は腎不全患者さまに合併することが多く、治療はEPO補充と鉄剤投与が主体となります。Hb値が10~12g/dlになるようにEPOの投与の開始、増量または減量、中止が必要になります。鉄欠乏性貧血が合併する場合は、EPOの補充と同時に鉄剤の補充が行われます。

次回は、透析患者さまの治療についてEPOと鉄の補充療法について述べたいと思います。