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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2020.12.9

透析とリハビリテーション(2)

横浜第一病院
院 長 大山 邦雄

透析患者さまのリハビリテーションの主目的は、QOL(生活の質)/ADL(日常生活動作)の改善、フレイル・サルコペニア(前号参照)の予防・進行阻止です。そのために、必要なエネルギーと蛋白の摂取および運動療法(リハビリ)が大切です。透析患者さまは、週3日は透析です。もちろん、若い方や仕事をしている方は週3日4~5時間を透析でとられるだけで、透析日も仕事や運動ができる方もいます。そういう元気な方は夜間や深夜透析という選択で、十分なリハビリの時間を取ることもできますが、高齢になってくると、年齢による体力の減退に加え、合併症の存在が増して、透析日(特に透析後)は動けなくなったり、動きたくない方が増えてきます。このような患者さまにとって、体力の維持・向上にリハビリが重要になります。
リハビリには有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)があります。いずれも息を止めずにやることが大事です。息を止めて重いものを持つなどの運動は血圧が上がるうえに効果が少ないといわれています。

1.準備運動
リハビリを開始する時は準備運動から始めましょう。柔軟体操やストレッチです。体の広い範囲をほぐし、ゆっくりと、ストレッチは15~20秒、息を止めずに行います。アキレス腱のストレッチ、ひざの屈伸、足首の回転、上・下肢、体幹のストレッチなどです。

2.有酸素運動
基本的には運動負荷試験をやって、個人の心機能や筋力によって運動強度を決める「運動処方」に従って行うのが安全ですが、そこまでは設備などの問題もあり透析クリニックではなかなかできません。その場合は、ウォーキングで無理なく、おしゃべりしながら歩ける程度の速さから始めるのが安全です。慣れてくれば普段より少し速めに、息切れがしない程度で20~60分/日を目指します。ジョギングは、多くの場合、有酸素運動ではありません。有酸素運動は無理なく長く(1時間程度)続けられる速さでやりましょう。

3.レジスタンス運動
フィットネスクラブなどでマシンを使う運動ですが、自宅でもできる運動を覚えるとよいでしょう。スクワット(立位でひざの屈伸)、ブリッジ(臥位でヒップを上げる)、ひざ抱え、つま先立ちとつま先上げ、手のグリップ運動、ゴムベルトやゴムボールを使った運動などです。どれも息を止めずに1セット10~15回を目標に、無理せずに行うとよいでしょう。

4.透析中のリハビリ
透析を行っている間の時間を無駄にしないために、透析中の有酸素運動やレジスタンス運動も有用です。ベッド上で透析の前半にやるのが一般的ですが、個人の状態をよく把握しているクリニックの医師、看護師、理学療法士と相談してください。透析後半は血圧が下がりやすいので避けましょう。当日の体の調子をよく考えて無理なく行うようにしましょう。

5.終わりに
リハビリは根気よく、長期間、習慣として続けることが大事です。そのためには、睡眠を十分にとり、ご自分の体力と体調に合わせて、頑張りすぎないこと、週1~2日は休むこと、リハビリ中に苦しさや痛みのない運動を選んでください。そして、普段と違う症状、特に息切れ、めまい、胸の痛みや圧迫感、不整脈、強い頭痛などが出たらすぐリハビリを中止し、クリニックの医師に相談してください。

リハビリは無理なく楽しく、習慣として、長く続けていくことが大切です。これにより生活が楽しく、活発になることを願っております。