MENU 使い方
ガイド

私たちは、患者さま、お客さまへ
トータルサービスを提供する
医療・福祉グループです。

文字サイズ
標準
背景色

採用情報

CLOSE

お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2022.7.15

貧血について ③腎性貧血の治療

吉祥寺あさひ病院
院長 有村 義宏

腎臓が悪いために起こる貧血を腎性貧血といい、多くの透析患者さまにみられます。腎性貧血は、腎臓の働きが低下して、腎臓で作られるエリスロポエチンという赤血球造血ホルモンが少なくなるために起こります。このため、腎性貧血の治療には少なくなったエリスロポエチンを補う薬を用います。これには大きく2種類あります。

1つはエリスロポエチンの注射薬で、エリスロポエチン製剤(赤血球造血刺激因子製剤:ESA)と言い、現在腎性貧血の治療に最も使われています。

もう1つは、体の中にあるエリスロポエチンを作る細胞(主に腎臓、一部は肝臓などにあります)にエリスロポエチンをもっと作らせる薬です。赤血球は全身に酸素を運びます。酸素が不足すると、エリスロポエチン産生細胞にエリスロポエチンを増産するようにと働きかけるヒフ(低酸素誘導因子:HIF)という特殊な物質が作られます。マラソンの選手が酸素の薄い高地でトレーニングするのは、体の中でこのヒフが増えてエリスロポエチンが多く作られることで赤血球が増え、筋肉などに多くの酸素が運ばれ持久力が向上するからです。

ところが体の中にはバランスをとるようにエリスロポエチンを減らす仕組みも備わっています。ヒフ・ピーエイチ(HIF-PH)という物質がヒフを分解することで、エリスロポエチンの産生を抑えています。腎性貧血の患者さまの体の中にもヒフ・ピーエイチがありエリスロポエチンの産生を抑えています。そこで、ヒフ・ピーエイチの働きを抑える薬(ヒフ・ピーエイチ阻害薬)を用いるとヒフの分解が抑えられエリスロポエチンが多く作られるようになり赤血球が増加します。この薬は内服薬で、2019年に承認されました。

これら赤血球を増やす薬を使う時には原則として鉄剤も併用します。エリスロポエチンによる赤血球造血には赤血球の材料のひとつである鉄が必要だからです。鉄剤には注射薬と飲み薬があります。高リン血症治療薬の中には鉄を含んでいるものもあります。