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お役立ちコラム

よくわかる透析の基礎知識

2018.10.24

ドライウェイトのお話(2)

横浜第一病院
院長 大山 邦雄

1.ドライウェイト(DW)とは?
 DWは、1967年にThomsonにより提唱されたもので、「臨床的に浮腫などがなく、透析によって最大限体液量を減少させた(除水した)時の体重で、それ以上、除水すれば、血圧低下やショックが必ず起きるような体重」とされました。しかし、現在のDWの考え方はそこまで厳しいものではなく、日本透析医学会のガイドラインでは、「体液量が適正であり、透析中の過度な血圧低下をおこすことなく、且つ、長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義されています。でも、この定義では一般の人には何のことやらわからないでしょう。それを何とか解き明かしていきたいと思います。

 

2.DW決定の問題点
 医学的には、上の定義に基づいて、透析患者さま一人ひとりの状態にあったDWが設定され、透析終了時の目標体重になります。DWを決定するには色々な指標がありますが、それほど簡単なことではありません。多くの透析患者さまは、医療者側との間でDWの決定(変更)で不満を持ったことがあると思います。

そのような不満は何故起こるのでしょうか?

それはこの定義自体が曖昧であり、DWを決めるための医学的指標(体液量が適正か否か)が、浮腫の有無、心臓の大きさ(心胸郭比:CTR)、血圧、HANP、心エコー検査による心機能や下大静脈径等々、数多くあることと、さらに、透析患者さま自身の自覚症状、日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)などがDW決定(変更)の重要な判断要素になるためだと思います。

医師は、医学的指標に基づいてDW(体液量)が適正か否かを判断します。これに基づくDWが、定義の「長期的にも心血管系への負担が少ない体重」の根拠になるからです。しかし、透析療法は患者さまの日常生活までを犠牲にしていいものではありません。この観点から医師と患者さまとの間で調整が必要になります。両者にとって理想的なDWは、[浮腫もなく、血圧も適正範囲(100~140/90以下)、CTRが50%以下(女性は53%以下)、HANP100pg/ml以下で、透析終了時の過度の血圧低下もなく、日常生活を支障なく行える体重である]と言えます。でも、このような患者さまは少ないのではないでしょうか。透析患者さまの高齢化、糖尿病や心血管障害などの合併症の増加などでDWの設定は難しくなります。特に、高齢者や心臓機能障害のある方では一回の透析での除水量を制限しなくては、血圧が下がってしまって、透析を続けることができなくなります。日本透析医学会のガイドラインでは、予後を考えると、透析間(中2日)の体重増加は、DWの6%未満にすることが望ましいとされています。即ち、DW50kgの患者さまは中2日で3㎏未満の体重増加で来ていただくことになります。また、このガイドラインでは透析の平均除水速度は15ml/kgDW/時以下を目指すとされています。即ち、DW50kgの方では、15ml× 50kg×4時間=3,000ml(3.0kg)が最大除水量となります。中2日の体重増加の許容範囲はDW60kgでは3.6kg以下、70kgでは4.2kg以下、80kgでは4.8kg以下となります。しかし、糖尿病や心機能が低下している患者さま、低血圧の患者さまなどでは、この範囲でも血圧が下がってしまう方が多くみられ、体重増加をもっと少なくする必要があります。

 

3.透析患者さまの自己管理

透析患者さまは塩分、カリウム、リンなどの食事制限の自己管理が必要ですが、透析間の体重増加のコントロールは大変重要な自己管理のひとつです。

前回のドライウェイトのお話(1)で述べましたように、透析間の体重コントロールで大事なのは飲水量です。体重を増やさないために食事を制限しすぎると、カロリー不足となり、ADL、QOLに支障が生じてきます。必要なカロリーを摂りながら、体重増加をコントロールするためには塩分と飲み物を我慢することが必要です。一回の透析では血圧低下やショック、長期的な予後では心不全などの合併症が起きる危険の増加など、体重が増えすぎて苦しむのは患者さま自身であることを理解していただきたいのです。